2012年09月21日
微笑みの国で雨にウタレテ・・・90's 其ノ七
町田君と一緒に居たのは、静岡在住の大学生のオキ君であった。
オキ君を初めて見た時は、「あ!俺この人と会ったことあるよ」と
いうのが第一印象であり、そんなことをオキ君に言うと、
「それいつも会う人会う人に言われるんだよ。最初は気にしてなかったけど、
頻繁に言われるもんだから、だんだんと気にしだして色々理由を模索
したんだけれど、どうやら昔のナントカというマイナーな、ても見れば
ワカルという俳優に似ているからだ!という結論に達したんだ」
と、町田君とは違って、妙に落ち着きのある口調で語った。
「そうか・・そう思われるのは、そういう理由かもしれないな。」
と、俺はそのナントカという 俳優の顔を思い浮かべながら、
でも名前は浮かんでこなかった。
オキ君はうちらより1歳年上で大学では教育学部で勉強し、
将来、高校の先生になるのが目標のセーネンだった。
専門科目は国語であった。
オキ君の旅は6ヶ月に及び旅らしく、うちらよりも一足先、1996年の6月に
日本を飛び出していた。
4年生になったばかりで周りは就職活動に追われる中、オキ君は休学して
6ヶ月の旅に出ているという。
6ヶ月というのも曖昧な予定らしく、それが1年にも 及び可能性もあるという。
明日の風に身を任せ~気の向くまま赴くまま~というのが 彼のスタイルのようだった。
すでにタイ第二の都市、北部に位置するチェンマイに行ってきたばかりで、
「いや~チェンマイは涼しかったデスヨ。やっぱりバンコクと違い、落ち着くよ。
あとは自分で実際に行って見てよ。『百聞は一見にシカズ』だよ」
と、やっぱり国語の先生を目指しているだけのことはあることを言っていた。
そんな話を聞いていて、俺的にもチェンマイへの魅力が一気に高ぶった。
でも、結局は、今回も次ぎの旅もバンコクから南下してしまうのだが。
オキ君は、これからの予定は特に決めていないと言っていたが、次ぎは
インドに行こうという事は ぼんやりと考えていると言う。
ここで同じくインドに焦がれるナリタヒデキが
「ふむむ、、ソウデスヨネ。やっぱり旅の醍醐味はインドデスヨネ。
タイよりも喧騒がすごくて人間がきついのだ、ふむむぅう。
僕もインドを 旅してみたいのですよ。世界の中心と言うじゃないですかインドは。
人間の根底が見える気がするんデスヨネ。騙されるのも騙される方が悪い!
騙し合いの中に人間存在の本質が見えてくるのだ!
生か死!それはインドじゃなきゃ駄目ナノだ!ふむむぅうう」
と、いつものフムム口調とは打って変わって、新たな生きがいを見つけたのだ!的に
周りの皆がひくほどの「人生=旅、男一匹=旅」論だった。
「そうかもしれないね。そうそう」
と一言だけ、オキ君は言いながら、深くかぶっていた白い帽子を被り直した。
「そんなん気にしないべ!人生長いよ、インドだけじゃないべ、人生は」
と、その辺のタイ人をカラカッていた町田君は、今俺達はタイに居るんだからよ!
面倒くさい話はナシにしようや!という感じで、すでに生ぬるくなったシンハビアを
ひたすら飲んでいた。
その後、同じ場所で同じビールを飲みつづけることに飽きた俺達は場所を
移動することにした。
深夜までうるさく音楽がガンガン鳴り響くカオサン通りをやめて、 少し離れた
静かな寺院の脇のソイを入った所にあるゲストハウスのラウンジで
飲みなおすことにした。
そこで、町田君は今日までの旅物語をはじめて口にしたのである。
(つづく・・・)
Posted by bkkcolors at 17:27
│[金曜日] 辻本